コラーゲン:本来吸収されないとされていた低分子コラーゲンが血中に
2012/7/15 20:49
低分子コラーゲン飲料が美容への有効性を実証されたという実験結果と、
その実験の方法に対する疑問について、ご紹介しました。
〇コラーゲン:コラーゲンって有効? 低分子なら有効?
→https://beautist.cosme.net/article/248114
この実験で、疑問に思ったのは、美容界はプラシボ(偽薬試験)を
とらなくても、OKの世界なのかな?
OKであっても、医学部がかかわるなら、
とらないと信頼性を損ねるんじゃないかということでした。
対照のない実験が行われているということが、
辛辣になりますが、美容業界のレベルの低さを示していて、
科学的根拠に基づかない方法が学会発表として通ってしまう世界
なんだという認識をしてしまいました。
(その後、調べてみたら、サプリなどは医薬品と違い、
プラシボをとる必要がないことがわかりました。
メーカーが自主的にとるかとらないかを決めているようです)
■低分子コラーゲンの効果に対して否定の見解
また、低分子コラーゲンの有用性の報告については、
次のような見方がこれまでにあったそうです。
「コラーゲンをはじめとするたんぱく質は、
消化管でアミノ酸に分解されてから吸収され、体内でたんぱく質に再合成される。
ところが、コラーゲンを構成するアミノ酸の大部分は、
食事からとる必要のないものが多い。
そのため、低分子化コラーゲン(コラーゲンペプチド)を食べても
美肌効果はないとされていた。
飲食料でとるコラーゲンを低分子化したもの(コラーゲンペプチド)は、
肌には直接反映されないと思われていた」
ところが・・・
■低分子コラーゲンを血中で確認
京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 佐藤健司先生によると・・・・
10~20gのコラーゲンペプチド飲料で実験してみると、
血液の中にコラーゲンペプチドが吸収されていた。
この構造分析すると、ふたつのアミノ酸からなる
プロリルヒドロキシプロリン(Pro -Hyp)が見つかった。
そして、このPro -Hypは、特定の条件下で
コラーゲンを作る線維芽細胞の増殖を促進することがわかった。
コラーゲンペプチドを摂取することによって、
皮膚や関節などの成分を作る細胞を活性化するペプチド(Pro -Hyp)が
血液中に長時間存在することになり、「美容効果が期待できるかも」しれない。
という報告が出てきたことを美容雑誌「美的」で紹介されています。
→http://xbrand.yahoo.co.jp/category/bodycare/6043/3.html
■結果についての私見
上記の結果を要約すると、
低分子化したコラーゲンを飲んだら、
そのままは吸収されないとされていた、
低分子のコラーゲンが血中の中にあったことが認められた。
この低分子のコラーゲンは、「特定の条件下で」
コラーゲンを作る「線維芽細胞の増殖を促進」することがわかったようです。
「特定の条件下」というところがちょっと気になります。
「特定条件下」が「特殊条件下」を意味しているとなると、
なかなかその条件になりにくくなります。
さらに、低分子コラーゲンは、ここでも直接コラーゲンになるわけではなく、
「コラーゲンを作る細胞の増殖を促進」するわけで、
「間接的な働き」ということです。
そして、コラーゲンを作る細胞を活性化する低分子のコラーゲンが、
「血中に長く存在すれば」それだけ「コラーゲンを作る細胞も刺激」されるため、
結果、「皮膚のコラーゲンが増える機会」も
多くなる「だろう」と「期待」できる「かも」しれない。
というあくまで「推測」の域のお話なのでした。
また、「コラーゲンを作る細胞を刺激」するという効果なので、
できたコラーゲンが「どこに使われるか」わからないとも言えるわけです。
私は、この実験結果を、上記のように解釈しました。
■プラシボ試験のデータ
下記にこれらの実験のプラシボをとったデータが示されています。
→http://xbrand.yahoo.co.jp/category/bodycare/6043/4.html
このグラフのデーターが個人のデータなのか、グループの平均値なのかわかりません。
グループ平均なら、どれくらいの人数の検査をしているのかもわかりません。
また、スタートの段階で、コラーゲンを与えている人の水分量が、
プラシボより若干ですが、多く設定されていいます。
→これはグラフを見る上で、視覚的な操作がなくはありません。
また4週目でプラシボの水分量が減っているため、
全体として低くシフトしているように見えてしまいますが、
0週と8週の数値だけを比較して、コラーゲン投与と、プラシボ両者の上昇率を見ると、
→それほど大きな違いでもないように感じられます。
以上のように、実験結果に対して、どのように解釈するかというのは
それぞれのデータの見方にもよります。
しかし、少なくともこちらの実験は、
「プラシボをとって実験されている」ことについては他の実験と違うところです。
(美容業界がプラシボをとることを規定していないのにとったことについても)
■産・学 の共同研究
常盤薬品と大阪大学の共同研究が医学部がかかわっている実験が
プラシボをとらずに行われていたのに対し、
〇コラーゲン:コラーゲンって有効? 低分子なら有効?
→https://beautist.cosme.net/article/248114
医学とは関係のない京都府立大学大学院 生命環境科学研究科の先生が、
プラシボをとった実験をされていることに意味を感じます。
研究者の意識、質といっては大変失礼ですが、
研究への姿勢の違い、考え方の違いを感じさせられました。
そして、コラーゲンに対する「美的」の記事の締めとして、
東京海洋大学大学院 矢澤一良先生の次のような言葉がありました。
「栄養学的には、摂取したコラーゲンが再び体内でたんぱく質に再合成されるのに
数週間かかると考えられている。従って、即効性は期待できない。
しかし、「ドリンクを飲んだら翌朝、肌がぷるぷるになった」
という効果が見られることがある。
これには一理あり、「効いた」と思うことで、
血行がよくなり、肌がみずみずしくなるプラセボ効果。
心理面からの効果は病気の治療でもきちんと立証されている。
キレイになると念じながら飲んでみて。」
コラーゲンの作用は、実際の効果の他に、
服用者の心理的影響が強くでるものと思われ、
そのことを避けずに、しっかり触れたことは、一目おくことだと思います。
また、ウィキペディアや、独立行政法人 国立栄養研究所のサイトで、
コラーゲンについて次のような記載もあります。
ウィキペディアのコラーゲン 美容効果のところで次のような記載があります。
一部の臨床的症状に有効性が認められたという論文[6][出典無効]が提出されているが、
間接的な経路によってコラーゲンペプチドが体内でのコラーゲン線維の新生に
寄与する可能性は示唆されているものその有用性は疑わしい。
出典は下記の矢澤先生の論文ですが無効とされています。
6週間の女性の摂取で赤み、弾力性、しわが改善された(診療と新薬・第41巻第12号)。
1日当たりコラーゲンペプチド9gの摂取を8週間続けた女性において、
しわ、肌水分量が改善された(東京海洋大学の矢澤一良教授が試験)
一方、公平な立場で、健康食品に関する情報(文献)を集めた、
データベースが存在していることを知りました。それは・・・・
独立行政法人 国立栄養研究所 「健康食品」素材情報データベース で
コラーゲンの項目の記載の中に、二重盲検試験が行われた結果が報告されています。
→https://hfnet.nih.go.jp/
(トップへのリンクしかできないのでここから、素材情報データベースへ)
二重盲検試験とは→
薬などの性質を、患者だけなく、
投与する医師(観察者)もわからないようにして行う方法。
感謝のプラセボ効果や観察者バイアスの影響を防ぐ意味があり
科学的な方法とされている
■メディアの扱い方
最後に、美的の記事が、コラーゲン効果が、
プラシボ効果によってもたらされているということにまで、
触れて記事を構成しています。
これに対しては、「美的」の記事に感心しました。
美容雑誌の記事って、あまり参考にしないのですが、
このような総合的に広い視野で事実を伝えることが大切だと思います。
■「産・官・学・医」の研究と私たち
東京海洋大学大学院 矢澤一良先生の、「産・官・学・医」の研究に対して、
考慮すべきことを提言されていました。
〇第2回 産・官・学・医の相互協力体制を築け!
http://www.e-expo.net/column/supplement/supplement_02.html
企業・研究者・医療従事者・行政・メディアに対して。
そして、われわれ消費者の正しい判断力について述べられています。
大学も採算性が求められるようになり、
民間と組んだ研究が行われるようになっています。
研究費を捻出すればよいという、粗雑な研究に陥らないとも限らないと思うのです。
ちょっとおかしくない?とチェックできる目を持ちながら、
分かった上で、信じて騙されてみるのもいいのではないかと思います。
【関連】コラーゲン
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〇コラーゲン:コラーゲンって有効? 低分子なら有効?(科学的根拠?)
→https://beautist.cosme.net/article/248114
〇コラーゲン:吸収されないはずの低分子コラーゲンが血中に認められる(プラシボ) ←ここ
→https://beautist.cosme.net/article/259502
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